20131115

Maison Martin Margiela 2014SS トランクショー




こんにちは。
めっきり寒くなりましたね。




メゾン マルタン マルジェラ、2014春夏シーズンのトランクショーにお邪魔してきました。
半年に一度のお楽しみです。

毎度この時期になるとトランクショーと並行して
プレコレ入ってきてるよ売ってるよ〜というチョ・マテヨ顔面蒼白な事態が
当然のように起こっていましたが、今回はそうでもなかったです。


というかメインもプレもサンプル少なめで
これが本当の“トランク”ショーだねHAHAHAみたいな、
これ欲しいんだよねって目星付けてたのがことごとくノーサンプルだったのが残念でした。


そんな中でざっと聞いてきたコンセプトやディテールなどをまとめておこうと思います。






まずはメンズコレクション、今回のテーマは「過去の記憶」。
服にまつわる時間の流れにインスパイアされたデザインが主流となっているようです。


この14SSコレクションからメンズデザイン部門の人員が変わるそうで。
そういう意味でも、メゾンのコアコンセプトとも言える「経時」に改めて言及することで
これからのマルジェラメンズはこんな感じでいきますよ〜
ってコレクションにしたかったのかなあ、なんて勘ぐったりもしてみましたが



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多分コレクションで一番目立っていた【テーラーズテクニック

仮縫い糸やラペルの芯地、肩に詰められたパッドの綿等を目に見えるようにすることで
一着のジャケットを仕立てるまでに職人さんがかける長い時間を思い起こさせる狙いが。


いかにも本気の仕立て途中って感じですね。
つまんで引っ張ったら解けてきて焦りました。


腰に巻いているのは着古してどうしようもなくなったジャケットを真っ二つにし、
ベルト穴を開けてエプロンとして再利用した、という設定(たぶん)のもの。
ベルトと本体のセットで販売されるようです。
昔のアーティザナルっぽい発想ですね。








異なる服の要素を組み合わせて新しいひとつの服にする【コンバイン

このコートは作業着のツナギとコートを混ぜ合わせたようなデザイン。
無骨な作業着の雰囲気にコートの持つちょっとしたエレガントさが加わって
なかなか使い勝手の良さそうなアイテムでした。

ボトムは長い間履き込むうちに足元から汚れて変色していったのを
グラデーションで表現してあるんだと思います。君は炭鉱夫か何かなのか。


【コンバイン】には他にもラグビーとホッケー(だったかな…)のユニフォームを
合体させたカーディガン、カーコートとナイロンコートの合体したコートなどがありました。
カーディガンはトム ブラウンのアイコンのような袖の3本線に
身頃にはゼッケンらしい「10」のプリントが施されるなど、
ポップさとクラシックなスポーティさが合わさってて面白かったです。



全体的にこの辺のアイテムはコム デ ギャルソンぽいなあって思ったり。

もっとも、ギャルソンのドッキングは違う服を繋ぎあわせた事を強く主張してますけど、
こっちのものは「いや、コレは元々こういう形なんスよ」って白を切ってる感じで、
ファッション受けの良さそうなコンセプトながら出来上がった服そのものは
相変わらずのマルジェラだったのが印象的でした。







使い込むうちに本来の柄や質感、ディテールが消えて無くなっていく【イレイズ】

ケーブルニットの柄が所々消えて無地になっていたり
ミリタリーカットソーのディテールが一部剥がれ落ちている、など。


この靴のサンプルは無かったのですが、たぶん同じコンセプトだと思います。
たぶん。








本来は何もなかったところに経年に伴う痕跡が残っていく【インプリント

比翼仕立てだったジャケットを長年着続けたせいでボタンの跡が浮いてきたかのようなデザイン。
そこにあるはずのラペルは逆に痕跡だけ残して消えちゃってます。
これは後述のレディスコレクションでも大々的に扱われてるコンセプトですね。

ペンダントのキーケースも中の鍵のシルエットが浮き上がっています。








布地に顔料のようなものを塗布してレザーの質感を模す【レザーエフェクト

レザーパンツをとことん履きこんでバキバキにした感触を
再現してくれているのでしょうか。
本物の新品レザーで仕立てたパンツと並べて置いてあって面白かったです。








このコートは1911年のスイスはルツェルンにおける軍用ピーコートのレプリカ。
生地は【レザーエフェクト】のもののようですが、元々はレザーで作られていたんでしょうか。
エフェクトのかかっていない内側の布地とのコントラストが地味に効いてますね。
これに使われている変形メタルボタンって13AWのレプリカカーディガンのものと同じに見えるんですが、まさか使い回し?








このコートもレプリカだと聞いたんですが、あまり突っ込んで確認していません。
もちろんサンプルが無かったからですよ?
別に興味が無かったからとか口が裂けても言いませんよ?



身頃に飛び散ったオレンジ色は【ラスト】に基づく錆汚れのデザインだそう。
他にも首元にハンガーの錆が浮いて模様のようになっているカットソーなどがありました。

この錆のコンセプト、ちょっと前にもやってましたね。
あの時もシャツやパンツに錆が浮いてそれはそれは汚らしい面白い試みだと思いましたが、
今回のは「仕事してたら錆が飛んだ!」「ハンガーに吊ってたらハンガー錆びた!」等、
それが時間の経過につれて付着したものであることが解るような形になっていて楽しいです。

僕はいりませんけど。








同じくレプリカ、1923年のフランスにおけるウエストコート。

これはサンプルを見てみたかったもののひとつなのですが残念ながら無く。
同生地で作られたネクタイがあったので素材感だけ堪能してきました。
コットンシルクの光沢にシャンパンゴールドの色味、素晴らしいです。GOODです。


ただレプリカであることに加えて素材にシルク様が混ざったおかげか、
ちょっと引くような値が付けられていました。








ロイヤルブルーやダークネイビーなど、様々な青がキーカラーとして登場。
定番の5ZIPライダースも“インディゴ”と名付けられた褪せたブルーで大変素敵でした。


そのひとつでもあるこのパンツ、
使われている光沢のある素材は【デニムフィーリング】のものです。

【レザーエフェクト】同様、
本来とは違う素材でデニムのような質感を出そうとしたものだそうです。
これは過去の記憶とどう繋がるのかちょっとよく解りません…。
キーカラーのバリエーションとして作られただけでしょうか。








毎度おなじみ、服の内部構造を表に出す【インサイドアウト

見ろよこの丁寧な仕事!
おまえら普段こんなとこ見ないだろ!どんだけ時間かけてると思ってんだよ!!

職人たちのそんな嘆きが聞こえてくるようです。








首に巻いた大剣のネクタイは【テーラーズテクニック】の一環。
通常幅のネクタイに仕立て上げる前の段階で縫製を止めたような作りになっていて、
かちっと折り目が付いているので畳んでネクタイとして使うことも、
広げてストールぽく使うこともできる仕様だそうです。
グリーンスカーフガールみたいですね。



そしてもうひとつ上に挙げたルックでも着ているすけすけニット。

これはちょっと前のシーズンでもやっていた【トランスペアレンシー】のアイテム。
薄っすい素材の服を着てレイヤードを楽しもうとか何とかのアレですね。
シーズンテーマに沿って解釈すると、着込んで生地の痩せたニットの透け感とかの再現になるんでしょうか。





あとこのニット、



無地じゃなく模様が入っています。






これは【エンベロープ】というコンセプトらしく、




こういう古い封筒の内側に描かれたセキュリティパターンに
着想を得た模様なんだそうです。






ニットの模様はこれですかね?




他にも




こういったパターン柄のシャツやフロッキープリントのカットソー、
封筒の窓のような装飾がついたアイテムなど、色々と用意されているようです。

なかなか凝ってますね。








…とまあ、ざっとこんな感じです(息切れ)

コレクション公開当初は随分チャラいおっしゃれだな〜って思いましたが
こうして細かい説明を受けるにつれ、相変わらずのマルジェラさんなんだなって
感じるようになってきました。



まあ、これまでのコレクションも十分におしゃれなんですけど、
お前それどこのマフィア映画参考にしてきたんだよ… みたいな
何処かには居そうだけどちょっと浮世離れしてるねって感じは薄まってるような。


これまで着てる服自体はどれもぎりぎりノンフィクションだけど
合わせ方のせいでルックではぎりぎりフィクションが漂っていたのが、
今回は服自体のフィクションも強まっているような気がしないでもないというか。



前々から「10ラインはもっとはっちゃければいいのに」って思ってたんですが、
つまりそういうことなんですかね?10がはっちゃけるようになってきたんですかね?


僕としては“コレクション”である10ラインのファッション性が強くなれば
その分コントラストが強まって14ラインの“ワードローブ”な服も輝きを増すと思いますし、
それらを組み合わせて作られるショーがより良いものになるんじゃね?って
短絡思考なんですが。


逆に14ラインがちょっとご機嫌伺いみたいにファッションファッションする方が嫌なので
10ラインにはこれからも順調にはっちゃけていただきたいです。


いいぞーもっとやれー






* * *






続いてレディスコレクションです。



テーマは「サーカス」。 サーカス??


まあ、ただでさえ手に取れる品の少ないレディスでしかも今回は春夏、
もうほぼ全てのお品物がスルー必至なわけで(あ た り ま え)。


おかげで詳しい説明、あんまりちゃんと聞いてなかったです。
なんでサーカスなのか、とか。サーカスだからなんなのか、とか。






このスパンコール刺繍のアイテムがどれもとても素敵に見えたので
ダメ元で実物拝んでみたいですねぇって言い寄ってみたら
すみません、サンプルありません…

デスヨネー






そんなサンプルも入荷も少なめなことに定評のあるDéfiléラインですが、
数少ないサンプルの中で図抜けて可愛かったのが


こちら。

このトレンチワンピースがかけられたトルソーの前で
担当の方とひたすらかわいいかわいいってべた褒め合戦やってました。
それくらいこれは良かった。サイドスリットやらポケットの形状やら
褒めだしたらきりがありませんでしたが、なにせかわいいんです。
もはやそれだけが正義だと言わんばかりに。






あとこれ使われてる生地が素人目にもとても良いもので、
お前らトレンチの老舗とかじゃないくせになんでそんな本気出すの?
って問い質したくなるくらい、肉厚で滑らかで良い色のこれぞトレンチ!な生地でした。








ショーに出ていたこちらのトレンチコートも同生地の仕立て。
通常のセンターベントに加えて両脇にスリットが入っている以外は
本当にベーシックなデザイン。騒々しいところは一切無しです。
こういう引くところは徹底して引くのが素晴らしい。


長く使えるいいトレンチがほしい!って人には本気おすすめの逸品だと思います。
僕も欲しいです。


無論値段も素晴らしい予感ですけどね(^v^)
3…とか言ってましたしね(^v^)








このノーカラーのコートもシンプルでいいなと思いましたが、話し始めに
こちらはカシミヤで…
って言われた時点で詮索するのを止めました。やめてくれ怖すぎる。










プレコレクションのメインコンセプトはメンズにもあった【インプリント
服に本来備わっているディテールが痕跡だけ残して消えているパターン。


このコンセプトは元々2001年に発表されたもので、今回はその復刻のようです。



最近はショーコレクションで新しいコンセプトやシルエットを発表しつつ
プレコレクションで過去のコンセプトを復刻・再解釈するという流れが
定着しつつあるみたいですね。


昔の作品を写真越しにしか体験できない自分にとってはありがたい話です。


その他、先シーズンの【エロンゲート】も継続で展開されていました。
(前に【伸ばして切って】って呼んでいたシリーズですねw)

あとは、イスラエルの都市テルアビブで見つけたという
七分袖で丸い肩のシルエットが可愛らしいイブニングコートやジャケットのレプリカなど。



ただ正直そこまで興味をそそられなかったのであんまり注視していなくて、
つまりプレに関してはあんまり書くことがありません。ひどい話だ。


レディスはとにかくトレンチ欲しいの一点張りでした。
あれはいい。






* * *






だらだらと書き殴ったので見辛かったら申し訳ないです。
お付き合いいただきありがとうございました。


なんだかんだ言ってやっぱり新しいシーズンの雰囲気に触れると気持ちが高まりますね。

今回はメンズ・レディス共に
過去の作品やコンセプトと新しい試みや解釈とが混然とした印象でした。
特にメンズは初見の印象と詳しく話を聞いた後の印象がまるで違うものなどもたくさん。


吊るされた服の、一見しただけでは掴みきれないところに隠された意図や試みを
目ざとく見出だせる眼力やセンスが欲しいなって改めて思いました。











おまけ




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